空きっ腹に海苔

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煙を連れて帰り道

るぱん 八王子

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暖房と人の湿気で少しこもった空気の中、一杯目のビールに口をつけた瞬間、唇に触れるグラスの冷たさと部屋の熱気との温度差に感じとる冬の訪れ。夏に冬がどう寒かったかを思い出せないのとおなじく、この小さな喜びも冬になってみないと甦らないものの一つである。うだるような夏にいかにも涼しげな焼肉屋の冷麺の味は冬には味わえないし、冬は冬でユッケジャンクッパで締めて店を出た瞬間の汗がひく快感も夏には味わえない。焼肉にかぎらず、あらゆる食事に芯まで染み込んだ食体験がある。四季の移り変わりがそこを揺さぶるキーになりがちだったりする。朝昼晩三食365日にそんなチャンスがあるのである。一人飯でもそうでなくてもどっちにしても、食べたいものを選んで食べてきてよかったと思う。

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不健康は隅っこが好き

四季ボウ坊 新橋

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光と色でも食べている。事務所の蛍光灯の下で食べる食事は侘びしさを増す。お店に入って食事をしていて意識することはあんまりないが、照明の力は確かにある。煌々と白く明るい店内で食べる食事は、日々の糧という感じがして食欲がみなぎる。牛丼屋とかファミレスとかチェーンでデイリーな食事を出すようなところはそういう印象、じつに健康的なのだ。最近はそういうところでもちょい飲みを始めるところが多く、物の興味でビールを頼んでみると実は途端に違和感がうまれる。アルコールを摂取するにはなぜか明るすぎる感じがするんである。特に牛丼屋なんかはスタッフや他の客の顔の距離も近く、その顔色までありありと判るような明るさで、実に座りが悪い。そこへいくとサイゼリヤの照明は、絶妙な色味があって腰が落ち着く。そもそもワインを提供する前提で店作りがなされているということだろうか。そこへ行くと、中華料理というのはどんな店内でもおいしく感じるし、ビール初めお酒もどんどん飲みたくなるところが偉いと思う。全体的に茶色く味の濃い感じが、人を料理に集中させてくれるのかもしれない。

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0.5坪の懺悔室

高幡そば 明大前

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一家で胃腸炎に罹った。自分は特に、胃の責め苦を負った。健常時にはあれほど魅力的に思えたあらゆる食べ物のことを、思い浮かべるだけで絞り上げられるような吐き気と痛みが苛んでくる。便器に顔を突っ伏し、ひと時落ち着いて床に就くと、このまま眠り意識を失ってしまいたいのに、それも叶わないほど体から湧き出る寒気。抜け殻となって部屋の中を眺めながら改めて人は自分の意識で意識を閉じられないのだと痛感した。これがいつまで続くのかと思うだけで途方が無く、さりとて横になること以外に何も手につかない。たまに、たとえ発熱があろうと何だろうとちょっとした不調ごときで仕事は休まないとか、昨日まで元気だったのにいきなり当日に体調崩すとかないよね、などとのたまう方を見受けるが、そんな人はこういう胃腸炎の苦しみをきっと知らないだけか、知っていても苦しすぎたその体験を防衛機制かなにかの作用で記憶から遠く消し去っているのだと思う。1.5日かけて復活したもののまだ油ものは口にできないので、とろろそばにした。振り返ると、まだ1歳になったばかりの子供はそれなりに吐いてはいたもののケロッとしたもので、大人2人の苦しみ方に比べれば穏やかなものであった。この出来事を、食欲というものを深く知ってしまったが故の業だととらえて慎ましくありたいと思った。

流行のあとさき

養老乃瀧 松原団地駅前店│店舗詳細│養老乃瀧グループ

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人格形成において影響少なからぬ少年期に某グルメ漫画の影響をつよく受けたために、サシが多い肉は脂を食ってるだけで本来の肉の味でないのだ、赤身こそ最高、的な志向を抱きがちになってしまっていた。スーパーで高額な霜降り肉に蔑みの視線を向けて安価な赤身が多いステーキ肉を買って家で焼くものの、やはりパッサパサでもそもそした食感に打ちひしがれて割り切れないまま酔いどれて眠る夜を何度も経験した。赤身肉は、焼く前の温度管理やら筋切りやら厚みに合わせて加熱時間を変えることやら休ませることやら、熟練してないと上手に焼くのが難しい。何より、同じ品種を同じ厚み同じ重量に切り出した肉であってもその個体差を読み取ってプロは加減をしているのだ。そういう技術や経験や知識を踏まえるという前提をすっぽかして、何事も表面だけをなぞって通ぶったことを言うのは本当に恥ずかしいことだと、ほどよいサシの入ったホンマグロに添えられたわさびをつつきながら反省した。養老乃瀧の看板で養老乃瀧のグランドメニューもおいてあるのだけど、実質は鮮魚と手作りおつまみが中心の手書きメニューをぐいぐい推している。魚の鮮度も申し分なく、コスパも良い。過去に一大ムーブメントを起こしてのち成熟したジャンルが、その土壌を開放して地域に根付く店をつくる機会を提供するなんて、エコと感じた次第。

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口を肥やして腹を肥やさず

 

獨協大学|学生生活・キャリア|学内施設 | 学生食堂・教職員食堂・カフェ

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食べたくても絶対食べられないもの。自分は10代にスポーツをやっていなかったので、朝から晩まで部活等々で体を酷使してやっとありつくご飯の美味しさは、想像するだけで味わえない。部活中に何度も空腹をこらえながら時間が過ぎるのを待ち、学校を出てようやく帰宅して食卓に座って口にした一口目はきっと唸るほどうまいに違いないと思う。だが今やその頃の肉体でもないし、その年代が勤しむようなスケジュールで運動ができるわけでもないので、これは実質食べたくても絶対食べられないものである。就職して以来初めて大学の学生食堂に来てそんなことを考えていた。5個入りと7個入りを選べる唐揚げ丼はその差額わずか50円、これこそ正に学食ならではの価格感である。しかし価格とは裏腹にそのクオリティは、揚げ置きの冷め気味温度でありながらクリスピーな衣にもも肉のジューシーさを併せ持つ味わいで、記憶にあった学食クオリティを大きく凌いでいるのだった。それにしても、人生ではもう二度と味わえない食事が思い浮かべれば無数にある。今食べられるものを真面目にすこしでもおいしく食べられるように考えることは人生の後悔を少なくするコツの一つかと存じ得る。

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離れたくない椅子

のだぴん 西武新宿

ようこそ のだぴんへ

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某口コミ系サイトが掲げるテーマの一つに「失敗しない店選びのため」というものがある。ネットで見て訪問したら想像していたのと違ったというギャップを「失敗」と位置づけているようだ。初めての店なのに張り切って思い込みでええかっこするから後悔するのである。とりあえずビールと1,2皿注文してイマイチだったら20分かそこらで別の店に移るのもそれはそれで楽しかったものだと思うし本当に大事な会合なら下見に行くなり知り合いを伝って情報収集するなりしても良さそうなものとも思わなくもないが、実際にはそうやって不満をどこかになすりつける人が多いのだろう。とはいえ口コミで評価が高ければ多少のことも気にならなくなるならそれも確かにこういったサイトの恩恵かもしれない。また人気店というだけで訪問したことに達成感を得られる人もいるだろうから、食べ物について影響力の高い情報を知ることを実際に味わうことよりも大事にする人はきっといるに違いない。にしても赤の他人の意見を自由な解釈で誰もが参照できるようにしたということはこういったサイトに限らずすごい出来事なのだと改めて思う。ただ自分はだいたいどんな店にいようが楽しく過ごせる人と食事がしたいし、実際そういう人々に囲まれていることが本当に幸せである。

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白い思い出

天丼かえん 大阪駅前第一ビル

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10年以上前の関西にいたころの話。夜通し難波で飲むことになっていた深夜2時ごろ、ビックカメラの前に文字通り半分尻を出して寝そべっている人をみかけた。男か女かもわからない風体の人間が、あまりに動かないので心配になって声をかけようとしたら、通りがかりの小柄でややボロなウェアをまとったおじさんが止めろと声をかけてくれた。いわく、こんなんに親切のつもりか声かけて、あとで何言われるかわからんど、こういうやつには何もせえへんのが一番や。笑いながら自転車で去っていくのを見たあとに、ネオンとネオンの間の闇で尻は、月の光だけに青白く照らされていた。ゆるくざっくりと飲んで過ごしたいときについミナミへ足が向かうのは、そういった脱力感にあふれる出来事に自分のやさしさが試されるような街の雰囲気が気分にマッチするからなのかもしれない。だからなのか、多少は気取った感じで食事がしたいときの自分はミナミをあとにキタへと向かうのだった。すくすくっとたちならぶビルには夜景が見える高層階の店もいくつかあり、地下も地上も建築物がととのっているのか歩くだけでも定規を当てたような直線がつぎつぎ視界にやってくる感じが、心なしか背筋を伸ばしたい気分を後押しするのだと思う。2016年の今、歩き比べるとどう感じるのだろう。

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