肉汁のやり場に困れ

せっかく水気をしっかり含んだいい肉だったのに、切るタイミングを間違えたようで、カットした瞬間肉汁が流れ出してしまった。 焼き固めてじっくり加熱した赤身肉は風船のように張ってくる。こういった場合は無理にステーキにせず冷まして薄くスライスしても…

粉物ローカライゼーション

流行とは対象が本来広く持ち合わせる多様性を否定する現象でもある。讃岐うどんが流行ったときに我々は歯ごたえのないうどんはうどんではないかのように振る舞ったではないか。 ラーメンとて、博多とんこつの細麺が流行れば、とんこつに関係のないラーメン屋…

暇でもないのに暇潰し

自分だけかもしれないがGW期間といえばなぜか、毎年、猛烈に「新しいこと」に触れたくなるのが風物詩だ。だいたいは音楽、本、習慣、などである。そもそもGWにまとまった連休を取ることがないので毎年出勤が基本、しかし天気もよく、人混みのストレスもない…

ナイアガラに焼け石

「無いよりはマシだけど明らかに足りない」状態ほど質の悪いものはない。しかしながら注意していてもこれに出くわすこと、または自らがこれに陥ることがままある。 塩気の足りない焼き鳥、中途半端に砂糖を入れたコーヒー、カツオや昆布をケチったダシ、等々…

焼き鳥と躾

世のお母さんたちはどうやって子をなだめあしらう術を身に着けていくのだろうか。 客は七輪を前に、いわゆる焼肉スタイルで、鶏肉を供するすこし珍しい店であった。まだ塩が粒だっている様子、タレと肉のなじみぐあいを見るにつけ、厨房では大将が一皿ずつ肉…

大根が煮上がって春

これがこの冬最後のおでんだ、と思いながら大根の端を箸でさくっと割る。味がしみていながら、断面が切りたてのようにまっすぐした大根に出会えることは冬の幸せの一つである。 そんな大根は、実にお行儀よくすとん、と箸が入ることを知っているので、こちら…

(気持ちが)若返り系ランチ

素直に目の前の食べ物を、心から楽しんで食べることができたのは何歳までだっただろうか。ただただ、好物をお腹いっぱい詰め込んだ幼少時代。それは無垢がもたらす幸せであった。 やがて、認識できる世界が広がる。知見があってこそ、より味わい深いものに出…

脂・糖でトリップ

あんことバターの組み合わせが好きである。バターの部分はホイップでも練乳でもいい。乳脂肪と砂糖とあずきの相性は、味も香りも色合いもあらゆる点で世に語られる相性の平均値を超えているという確信がある。 その佇まいの魅力は、決してぴちぴちとした若々…

いま、食いにゆきます

好きなミュージシャンのプレイリストを作るような気分で食べたいメニューを選んでいる。じっくり聴き込みたいもの、BGMに流したいもの、旅行先や移動中などの場所、季節や時間に合わせたいもの。また、一人で聴くためなのか、一緒に誰かと聴くものなのか、広…

錯視と小銭

卵の個数差で人はどこまでお金を出せるのか。カツをとじる卵の個数で価格が変わるカツ丼は初めて出会った。卵が増えることで丼の上にもたらされる幸せが、ぱっと思いつかなかったが、その字面に脳と体が反応し、「並盛り卵二個+赤だし」を注文してしまった…

モツを動かす

ホルモンは、生まれたときから内臓というハンデを背負っている。生きている間も不随意筋として主となる生き物の消化活動を休みなく処理し続け、ときにガンや潰瘍といった病に襲われながらも老廃物にまみれてその一生を全うする。 随意筋である筋肉=赤身の面…

圧縮しない勇気

うどん店で、つきだしに牛タン。おそらく塩煮込み、もつ焼き屋ではゆでタン等と呼ばれるものだ。まず出汁を一口。節や煮干しがしっかりと匂い立つ。しかし二口目からは塩っぱく感じられ、正直面食らった。 しかしながら、あくまで料理の主役は出汁ではない。…

若きトリ肉の悩み

鳥千 府中 https://tabelog.com/tokyo/A1326/A132602/13118688/ 愛され体質、という言葉があるが、バナナは果物における愛され体質の白眉であろう。優しい甘み、歯も生え揃わぬ乳児でも噛める柔らかさ、皮が剥きやすく、マットな質感と程よい厚みの皮が指を…

境界の渚にて

漆の実 金沢 https://tabelog.com/ishikawa/A1701/A170101/17004976/ 自分は字が汚い。小学生くらいのころに、きれいな字でなくてもいい、丁寧に書きなさい、と親や先生に言われた。しかし自分はその丁寧という感覚が、わからない子供だった。ゆっくり書くこ…

トリックフリーな一年

喜はな 金沢 http://www.ki-hana.jp/ 今年は一年の中に巡り表れる季節の違いと降り立った土地をなるべく意識した食事をすることにしたいと思った。この数年、仕事を通じて各地に同じような中身のSCやモールが次々と建っていることを実感して、現代が一年を通…

多湿に強い味

今年最も記憶に残った食事の一つはベトナムの街角で夜中に食べたフォーと焼き飯だった。タクシーでたどりついたのは、十字路の角でわずかな蛍光灯しか照っていないコンクリの薄暗いガレージ的な場所で、調理台と鍋とまな板、野菜と肉と麺が常温で放置された…

おぼれる舌

ナチュラ マーケット 武蔵小杉 NATURA MARKET | NATURA group 右手に箸、左手にご飯。この定食スタイルで始まる晩飯から長らく遠ざかっている。たいていの場合ビール等アルコールを飲みながら食事を始めるためで、月に2日以上空けることがない。アルコール…

右手のフォークに誓って

桜丘 本気のパスタ Chotto - 東京都 渋谷区 - バー&グリル | Facebook ラーメン、つけ麺、丼物、カレー、そば・うどん、定食のご飯。この世には昼飯時の大盛り無料なものが色々ある中、一番心躍るのはパスタの大盛り無料だ。パスタの大盛り無料はほかの大盛…

煙を連れて帰り道

るぱん 八王子 https://tabelog.com/tokyo/A1329/A132904/13066910/ 暖房と人の湿気で少しこもった空気の中、一杯目のビールに口をつけた瞬間、唇に触れるグラスの冷たさと部屋の熱気との温度差に感じとる冬の訪れ。夏に冬がどう寒かったかを思い出せないの…

不健康は隅っこが好き

四季ボウ坊 新橋 https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13002161/ 光と色でも食べている。事務所の蛍光灯の下で食べる食事は侘びしさを増す。お店に入って食事をしていて意識することはあんまりないが、照明の力は確かにある。煌々と白く明るい店内で食…

0.5坪の懺悔室

高幡そば 明大前 https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131804/13053900/ 一家で胃腸炎に罹った。自分は特に、胃の責め苦を負った。健常時にはあれほど魅力的に思えたあらゆる食べ物のことを、思い浮かべるだけで絞り上げられるような吐き気と痛みが苛んでくる…

流行のあとさき

養老乃瀧 松原団地駅前店│店舗詳細│養老乃瀧グループ 人格形成において影響少なからぬ少年期に某グルメ漫画の影響をつよく受けたために、サシが多い肉は脂を食ってるだけで本来の肉の味でないのだ、赤身こそ最高、的な志向を抱きがちになってしまっていた。…

口を肥やして腹を肥やさず

獨協大学|学生生活・キャリア|学内施設 | 学生食堂・教職員食堂・カフェ 食べたくても絶対食べられないもの。自分は10代にスポーツをやっていなかったので、朝から晩まで部活等々で体を酷使してやっとありつくご飯の美味しさは、想像するだけで味わえない…

離れたくない椅子

のだぴん 西武新宿 ようこそ のだぴんへ 某口コミ系サイトが掲げるテーマの一つに「失敗しない店選びのため」というものがある。ネットで見て訪問したら想像していたのと違ったというギャップを「失敗」と位置づけているようだ。初めての店なのに張り切って…

白い思い出

天丼かえん 大阪駅前第一ビル https://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27003967/ 10年以上前の関西にいたころの話。夜通し難波で飲むことになっていた深夜2時ごろ、ビックカメラの前に文字通り半分尻を出して寝そべっている人をみかけた。男か女かもわから…

デバイスレス・デイドリーム

俺の味 名古屋 https://tabelog.com/aichi/A2301/A230108/23006858/ とあるトラブルで寒空の下に未訪の愛知を長時間徒歩で移動することが決まったこの日、乗り換えで昼時を迎えた駅、御器所を降り地上に立った。広くまっすぐな道と役所がある通りは曇り空も…

でっかち頭と2本の足

草加パリ食堂 Herbes | Facebook 一皿に込められた工夫と料理愛に、心がほころぶお店。ビストロのツボをしっかり込めたカジュアルな料理たちとリーズナブルな価格、しかも提供が早い。まさにご馳走の粋だった。ご馳走とはもてなしのために準備に走り回り山海…

心を餌に成長する味

新宿・どん底 1951年創業 新宿の老舗居酒屋 どんなありきたりなメニューも、この世に生を受けたとき皆おいしく作られて生まれてきたのだ。それを文化として残すか道具として消費するかだけかもしれない。簡単には抜けない根っこがあるということ。流行に合わ…

頼もしきデンプン

大学いも 千葉屋 たまらん大学芋だった。かりっ、ほくっ、を想像して噛むと勝手が違う。かりっ、のあとはとろっ、と来るのであった。芋であるにもかかわらずもそもそと口に残り続けることがない。裏ごしされたようになめらかに、サツマイモのと優しい匂いと…

ガラス際に恋して

海ぼうず 本店 | 海ぼうずグループ 生海苔と肝醤油で食べるサンマの刺し身。大阪東京を移動する間に2時間だけ滞在した静岡駅にて。一人で一時間を過ごすためにネット情報から選び訪問。歴史が伝わってくる看板の様子、店頭の巨大なおでん鍋。カウンター席前…

坂の上の蓋

道玄坂 漁 https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13124679/ 蓋付きの丼を食べた機会が殆どない。昔、美味しんぼで日本の丼文化に魅せられた外国人が登場する回があった記憶がある。天丼の天ぷらや、カツ丼のカツや、うな丼のうなぎが、それぞれ蓋によっ…

正午過ぎ、戦場の果て

亜寿加 渋谷 https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13001715/ 折しも12月の寒波が吹きすさぶ都心、辛いものと脂っこいものは寒冷地の郷土料理として発展してきた歴史があるといえどパーコー麺を担々麺と合わせてしまったこの一杯がもたらす熱気がもたら…

土になる人々 -やきとん 木々家 池袋

やきとん 木々家 池袋 https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13147286/ バブル末期?バブル崩壊後?に流行ったものの一つに「モツ鍋」というのがあったけれども、当時まだ中学生にも満たないくらいの自分にはモツ鍋が食卓にあがることもなく想像の中でそ…

油と女房

かつ吉|渋谷、新丸ビル、日比谷国際ビルのとんかつ専門店 会社は変わらないのに、職場が同じ場所から3年以上変わらないことなどこれまでなかった。いまの状況がそれでは落ち着きがあるかと言われるとそうでもなく、尻の座りは意図的に悪くしているくらいが…

無限坂心中

渋谷 | 道玄坂 百軒店商店街 » 0_ムルギー 大人になって面白いことの一つに、少年~学生時代に触れた漫画や小説や音楽などに出てきた実在の場所を訪ねて感慨に耽るというのがあると思う。ここのカレーは大槻ケンヂのエッセイを読んだ小学五年生のときに知っ…

汝、心を炒めるなかれ

元祖ニュータンタンメン本舗 ラーメン屋に入ることを決意する前に、その日のうちに再度ラーメン屋に相伴せざるを得なくなるようなことが本当に無いのかを深慮すべきである。それでも尚、止むを得ずいずこかで暖簾をくぐるようなことがあれば、炒飯がメニュー…

知恵と視覚と先入観

揚州商人 池袋 中国ラーメン│揚州商人 - 中華料理・小龍包・冷やし中華・タンタン麺 同僚の猛烈なプッシュを受けて注文。濃厚醤油麺。飲んだあとに沁みる旨味&塩気だったがいささかここに至るまでの摂食活動が激しかったため一握りの後悔。渋いほどに濃厚な…

限りなく透明に近い緻密な濁り

ポタパスタ 渋谷 http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13193965/ 不思議な麺だった。 いわゆる生パスタより白く見えるのはデュラムコムギだけではないということだろうか。そういえば野菜で知られる某パスタハウスのクイック業態で食べたパスタもこのよ…

三文判の損得キャッチボール

イタリアンバルUOKIN 池袋 店舗情報 | 株式会社魚金 魚金グループ 何をしたいかをはっきりさせているお店か、そうでないお店か、というのは、居心地の良さに大きく関わってくると思う。何をしたいかを発信しているつもりでも、その主体と利用者との距離が近…

その形は人々の願い

スガキコシステムズ株式会社 スガキヤ体験は地元のイズミヤのフードコートだ。一番訪れていたころは小学生の中学年頃までで、いつも母親と一緒だった。ラーメンと焼き飯のセットにするか、ラーメンだけにするか、とかその程度の選択肢だったと思う。夏休みの…

肉折々の癒し

尾崎牛 丸子屋(おざきぎゅう まるこや)|焼肉 皮下脂肪と内臓脂肪とでは融ける温度が違うのだろう。外傷から体を守る目的があって温度変化が多い皮下脂肪は比較的固まりやすく、温度変化が少なくクッション的な役割を果たす内臓脂肪はソフトでなめらかな質…

デジタルの雨漏りに心の戸締まりを

珍來 仕事の場合、降り立った土地がどこであろうとまず探すのはカレースタンドかラーメン屋なのであった。一人で素早くしっかりと食事をして次に向かうにあたって、たとえ駅に近かろうといちいち百貨店のレストラン街(大体高層階)なぞに行くわけはない。駅…

カレー、風にあざみ

TOP|新宿紀伊國屋書店ビル地下1階、元祖サラサラカレーのお店 モンスナック スープカレーのような、という謳い文句のようにいわゆる北海道名物スープカレー的なものとは違う。しかし見た目以上にしゃばい感じが、一瞬あれっと思うものの食べ進めていくうち…

色への憧れが静かに漲った

麺飯食堂なかじまの中島和仁(@55nakag)さん | Twitter 妙に色気のある風情というのが料理にもあると思う。 技巧を凝らして繊細な盛り付けがされているとか、これ見よがしな火入れのグラデーションとかでなく、うどんやラーメンのなんてことのない一杯が妙に…

渇望への羨望

ワインホール神田小西 神田の本格的ワインホール|ワインホール神田小西 ロックバンドの最小構成を3ピースという。大所帯バンドのお祭り感も嫌いではないが最小限の音の構成だけで客を酔わせるロックほど緊張感と色気のある存在はいないという気持ちは強い…

目を閉じて味わうな

東京都庁食堂 http://www.yokoso.metro.tokyo.jp/page/shisetsu.htm 勝手に立ててはいけない建物というのはいくつかあると思うが都庁などはその最たるものだろうか。 引っ越して4年ほどしてやっと住民票を移した都民としても、なかなか都庁までやってくる機…

手に負えない記憶の罠

ラーメン 萬馬軒 (新宿)http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13192506/新宿二丁目の交差点、歩道にはみ出すように出ていた様子と呼び込みのおじさんの独特のテンションに惹かれて入ってみた。味噌ラーメンにバターをトッピング。味噌ラーメンは大抵野…

塩梅チキンレース

http://www.bistro-shin.net/ビストロシン(目黒)約1年ぶりにビストロシン。いつ来ても圧倒されるメニュー数と人気だ。18時半に来てすでに2席しかない(しかもそのうち1席は皿2枚分くらいのスペース)。他の席だって決して広いといえるようなものじゃない。…

入り口が二つある宇宙

https://www.facebook.com/tonkatsuaoki (とんかつ檍 蒲田) 天候によって同じものでも味わいが変わるように感じることは楽しみの一つである。たとえ室内でのことであっても、味わいの違いを感じる。 晴雨の違いでおおきいところは、湿度の高低で香りが鼻に…

空腹の表面張力

フランス料理店 コンコンブル | Concombre空腹でお腹が痛いという感覚を長らく味わっていない。あの感覚に陥るたびに、いつも胃袋が「逆表面張力」的な状態になっていることを想像していた。ごくごく感覚的に。コップのふちでぱんぱんに張った水面がぷつんと…