空きっ腹に海苔

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空腹の表面張力

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空腹でお腹が痛いという感覚を長らく味わっていない。
あの感覚に陥るたびに、いつも胃袋が「逆表面張力」的な状態になっていることを想像していた。ごくごく感覚的に。
コップのふちでぱんぱんに張った水面がぷつんとこぼれた後は、見た目も自分の中の興奮も、全くどうということもない感じで平凡平坦になる。
空腹を表面張力にたとえていたのはピークをこえると何も感じなくなるのに似ているからかもしれない。
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最後に最も長い時間、食事をしなかったのは7年前に入院したとき。それでも4、5日程度のことで、点滴をつけていたのと初めての入院に緊張していたからか、起きているあいだに空腹が苦になったことはなかったように思う。

でも明日からまた食事が始まるぞっていう前日は、やはり夢に食べ物が出てきた。
そのときの自分の知り合いで一番料理ができるであろう料理人の先輩が、自分だけに素うどんをふるまってくれるという夢だった。
焼肉とかファストフードとかもっとこってりして味の濃そうな料理が出てこなかったのかわからないけれど、そのときは空腹もさながら、食べ物の匂いや食感やビジュアルや、食べるという行為にまつわる全てに飢えていたのだと思う。

そのすべてを夢の中で抽出したらそのうどんになったのだろう。さすがに夢だから、味も匂いもしなかった。
ただその透き通るような関西風のダシの色とツヤっとした麺線はすぐに思い出せるくらいに印象的だった。「今まで生きてきた中で最高のうどん」である。
しかも誰も食べたことがない、その存在は自分しか知らない。本当に美食を極めたい人に、自分の夢の中の食事を超える以上の体験はないかもよと言ってあげたい。
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