空きっ腹に海苔

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モツを動かす

 

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ホルモンは、生まれたときから内臓というハンデを背負っている。生きている間も不随意筋として主となる生き物の消化活動を休みなく処理し続け、ときにガンや潰瘍といった病に襲われながらも老廃物にまみれてその一生を全うする。

随意筋である筋肉=赤身の面々が、分厚い脂肪や皮に守られて傷つけられることなく成長し、屠畜場でも丁寧に切り分けられ個体識別番号とともに艶やかな精肉として出荷されていくのに対し、ホルモンは生前の苦労に報いられることなく、詰め込まれるように番号も与えられず十把一絡げに処理されていく。生死をまたいでもなおカーストに苦しめられるのである。

そうやって、生きている間から屠殺されてからも延々と厳しく辛い扱いを受けてきたゆえに、ホルモンたちは自分の個性を主張しがちであり、相手によってはそのクセを敬遠されてきた。だが、それは周囲の接し方の問題だけなのである。

とある駅で出会ったホルモンうどんに盛り付けられたシマチョウは、豊満でありながら無駄を落としたハリのある身体と、持ち前の色白をこれでもかと主張しながら、うどんの上で箸をつけられるのを待っていた。不遇な彼らがこうやって、重ねた苦労の分だけ積み上げてきた内に秘めたる魅力を発揮している場面に出くわすと涙を禁じ得ない。

鮮度がよいうちに丁寧な下処理をされ、剥がれやすい脂を失わないよう優しく取り扱われていくうちに、シマチョウは思っただろう。なぜ、こんな汚れた私たちにそこまで優しくしてくれるの?と。

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生前の営みをねぎらうような施しを受けるうちに、シマチョウは自分の魅力に自信をつけ始めたはずである。そして願っただろう、人々の前で輝きたいと。

十分な下処理をされたシマチョウの脂身は朝の雪のように光を集めて白く、じゅわっと湧き出る脂肪をたくわえながらも上等な牛の甘い香りと口溶けが上方風のうどんだしに上品なコクを与える。しっかり噛むとぷつんと歯切れる腸壁もじつに官能的で、また、薄くすきとおった色味からは想像もつかないほど昆布と鰹の旨味を抱えてまろやかな塩味でまとめられたうどんだしが、シマチョウの個性を引き立ててなお出汁と脂のよき相性を主張してくるのであった。

あまねくホルモンたちに、この歓喜を伝えたい気持ちになって仕事へ向かった。

 

河内うどん 近鉄八尾駅

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